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福井地方裁判所 昭和48年(む)108号 決定

申立人 田村忠夫 外二名

主文

本件各準抗告を棄却する。

理由

(一)  本件準抗告申立の趣旨及び理由は、別紙準抗告申立書記載のとおりである。

(二)  一件記録によれば次の事実が認められる。

(イ)  準抗告人等ほか六名に対する公務執行妨害等被告事件の公判期日が昭和四八年七月一七日午後二時と指定されていたところ、同月一六日弁護人小島峰雄から右公判期日の変更の申立があつたので、福井地方裁判所は、同日右申立を却下した。

(ロ)  準抗告人等は、右公判期日に適法な召喚を受けていたのに出頭せず、弁護人は、公判廷で「被告人は東京へ旅行中」とのみ釈明し、それ以上出頭できないことの理由を明らかにしなかつた。

(ハ)  福井地方裁判所裁判官は、検察官の申立に基づき同月一九日準抗告人等に対する保釈許可決定を取り消し、保証金を没取する旨の各決定をした。

(三)  よつて判断すると、各準抗告人等が召喚を受けながら正当な理由がなく公判期日に出頭しなかつたことは、保釈許可決定の指定条件二に違反することは明らかである。弁護人は、「準抗告人等の出頭を確保できなかつたのは、ひとえに弁護人が公判期日変更手続をすることを約束しながらこれを怠つた怠慢によるものであり、準抗告人らとしては弁護人が公判期日変更手続をなし、それが許可されるものと信じて東京へ旅行に出たものである」というけれども、公判期日が変更されるかどうかはもとより裁判所の許否にかかるものであり、いまだ公判期日変更の許可がないのに、許可があるべきことを当然の前提として、弁護人等に所在も明らかにせず、公判期日に出頭しなかつたことは、不出頭につき正当な理由があるものとはとうていいい難い。

(四)  以上のとおり本件各準抗告の申立は理由がないから、これを棄却することとし、刑事訴訟法第四三二条、第四二六条第一項により主文のとおり決定する。

(準抗告申立書略)

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